ハローワーク伊丹 専門援助部門

令和5年度・令和6年度 障害者就労支援データ分析

データ期間: 令和5年4月~令和6年3月

分析概要

本レポートでは、ハローワーク伊丹の専門援助部門における障害者の就労支援状況について、令和5年度と令和6年度のデータを基に詳細な分析を行いました。 障害種別(身体・知的・精神その他)ごとの登録状況、就職状況、経年変化などを多角的に分析し、視覚的に理解しやすいグラフを用いて説明します。

分析ポイント

  • 障害種別ごとの新規登録者数の推移と傾向
  • 障害種別ごとの登録者総数の変化
  • 求職中と就業中の障害者の比率変動
  • 紹介件数と就職件数の関係性(就職率)
  • 重度障害者の就労状況
  • 令和5年度から令和6年度にかけての変化

1. 障害種別ごとの登録者総数の推移

令和5年度から令和6年度にかけての障害種別ごとの登録者総数(期末現在登録者数)の推移を確認します。 すべての障害種別において登録者数は増加傾向にありますが、特に「精神その他」の障害区分での増加が顕著です。

分析ポイント

  • 身体障害者の登録者数: 令和5年度末の1,211人から令和6年度末には1,310人へと約8.2%増加
  • 知的障害者の登録者数: 令和5年度末の872人から令和6年度末には928人へと約6.4%増加
  • 精神その他の障害者の登録者数: 令和5年度末の1,707人から令和6年度末には2,037人へと約19.3%増加

考察

精神障害者の登録者数の増加率が最も高く、これは社会的な認知の向上や支援体制の充実が影響していると考えられます。 全体的に登録者数が増加していることから、障害者の就労意欲の向上や、障害者雇用に対する社会的な関心の高まりが背景にあると推測されます。

2. 障害種別ごとの新規登録者数の月次推移

令和5年度と令和6年度における障害種別ごとの月次新規登録者数の推移を比較します。 月ごとの変動に加え、年度間の傾向の変化も確認します。

月次傾向の特徴

  • 身体障害者の新規登録: 両年度とも比較的安定した推移を示すが、季節的な変動がある
  • 知的障害者の新規登録: 月ごとの変動が大きく、特に令和6年7.10.12月に顕著な増加
  • 精神その他の障害者の新規登録: 令和6年度は全体的に令和5年度よりも高い水準で推移

年度比較

令和6年度は、特に「精神その他」の障害区分において、新規登録者数が令和5年度を大きく上回る月が多く見られます。 これは精神障害者の就労に対する社会的支援の拡充や認知度の向上によるものと考えられます。 また、知的障害者の新規登録については、令和6年度7.10.12月の突出した増加は、地域での就労支援イベントや啓発活動の影響かもしれません。

3. 障害種別ごとの就職状況の分析

各障害種別における年間就職件数と就職率(就職件数÷紹介件数)を分析します。 就職状況は障害者支援の最終的な成果を示す重要な指標です。

就職件数の比較

  • 身体障害者の就職件数: 令和5年度は60件、令和6年度は49件で減少傾向
  • 知的障害者の就職件数: 令和5年度は74件、令和6年度は80件で増加傾向
  • 精神その他の障害者の就職件数: 令和5年度は150件、令和6年度は196件で大幅増加

就職率の分析

就職率(就職件数÷紹介件数)を見ると、令和5年度から令和6年度にかけて知的障害者および精神その他が悪化しています。 精神その他の障害区分では、紹介件数の増加に対して就職件数も比例して増えているが、%は比較すると悪化している。 紹介件数および就職件数の増加は、就労支援の質的向上や受け入れ企業側の理解促進などの効果も表れていると考えられます。 一方、身体障害者の就職率は両年度で大きな変化は見られませんが、紹介件数・就職件数ともに減少傾向にあります。

4. 求職中と就業中の障害者の比率分析

令和5年度末と令和6年度末における障害種別ごとの求職中と就業中の障害者の比率を比較分析します。 この比率は就労支援の効果を示す重要な指標となります。

令和5年度末の状況

  • 身体障害者: 求職中 16.3%、就業中 44.0%
  • 知的障害者: 求職中 13.2%、就業中 66.7%
  • 精神その他: 求職中 28.4%、就業中 38.3%

令和6年度末の状況と変化

  • 身体障害者: 求職中 17.3%、就業中 41.8%(就業率減少)
  • 知的障害者: 求職中 15.1%、就業中 64.0%(就業率減少)
  • 精神その他: 求職中 30.6%、就業中 37.8%(就業率減少)

全体的に令和6年度は求職中の比率が増加し、就業中の比率が減少する傾向が見られます。 これは新規登録者の増加に対して、就職が追いついていない状況を示している可能性があります。

5. 重度障害者の就労状況分析

重度障害者の就職状況を分析し、全体との比較を行います。 重度障害者の就労支援は特に重要な課題であり、その効果を測定します。

重度障害者の就職状況

  • 身体障害重度: 令和5年度は20件(身体障害全体の33.3%)、令和6年度は6件(同12.2%)
  • 知的障害重度: 令和5年度は2件(知的障害全体の2.7%)、令和6年度は4件(同5.0%)
  • 重度障害者全体の就職率は令和5年度から令和6年度にかけて低下傾向

考察

重度障害者、特に身体障害の重度区分において、令和6年度は就職件数が大きく減少しています。 これは労働市場の変化や企業側の受け入れ体制の変化など複数の要因が考えられます。 一方、知的障害の重度区分では若干の改善が見られますが、依然として全体に占める割合は低い状況です。 重度障害者の就労促進に向けた一層の支援強化が必要と考えられます。

6. 月別紹介・就職状況の推移

令和6年度における月別の紹介件数と就職件数の推移を障害種別ごとに分析します。 月ごとの変動パターンを把握することで、効果的な支援時期の検討に役立ちます。

月次パターンの特徴

  • 紹介件数: 6月、10月、2月に増加の傾向
  • 就職件数: 4月、8月、12月にピークを形成
  • 精神その他の障害区分は年間を通じて紹介件数が最も多い

季節要因の分析

企業の採用活動は4月の新年度開始時と10月の中間採用期に活発化する傾向があり、 これが紹介件数や就職件数の増加に影響していると考えられます。 また、8月は夏季の短期雇用や試行的雇用などにより就職件数が増加する可能性があります。 12月の増加は年末の景気動向や企業の人事計画の確定に伴うものかもしれません。 こうした季節要因を考慮した支援計画の策定が効果的と思われます。

7. 総合考察と今後の課題

分析結果のまとめ

  1. 登録者数の増加傾向: 全障害種別で登録者数が増加しており、特に精神その他の障害区分での増加率が高い。 令和5年度から令和6年度にかけて約19.3%増加している。
  2. 就職状況の変化: 精神その他の障害区分の就職件数が大幅に増加(令和5年度150件→令和6年度196件)している一方、 身体障害者の就職件数は減少傾向(60件→49件)にある。
  3. 求職・就業比率の変動: 全障害種別において令和6年度は求職中の比率が増加し、就業中の比率が減少する傾向が見られる。 これは新規登録者の増加に対して就職が追いついていない可能性を示唆している。
  4. 重度障害者の就労課題: 特に身体障害の重度区分において、令和6年度は就職件数が大きく減少している。 重度障害者の就労支援には特別な取り組みが必要と考えられる。
  5. 季節変動の影響: 紹介件数・就職件数ともに季節的な変動パターンが見られ、企業の採用活動と連動している可能性がある。

今後の課題と提言

  • 精神障害者支援の強化: 増加傾向にある精神障害者の登録に対応するため、専門的な支援体制の拡充が必要
  • 重度障害者の就労促進策: 特に身体障害の重度区分における就職率低下の原因分析と対策が急務
  • 季節要因を考慮した支援計画: 紹介・就職の季節的パターンを活かした効果的な支援タイミングの設計
  • 企業側の受け入れ体制強化支援: 障害者雇用に積極的な企業の開拓と、受け入れノウハウの提供
  • 継続的な就労定着支援: 就職後のフォローアップ体制の強化による離職防止と長期就労の実現